トランプ関税ショックと経済クラッシュへの備え



令和7年4月8日
セリングビジョン株式会社
代表取締役 岡部秀也
(景気循環学会会員)

○明日からトランプの米国政府による各国への相互関税(日本24%)が実施される。すでに対日で3月から鉄鋼(25%)、アルミの輸入関税は施行しており、今回は全輸入品に上る。中国は同率の34%の報復関税で対抗する。EUも対抗措置をとるだろう。
これでは、米国投資銀行も予見する、「インフレと不況が併存するスタグフレーション」に陥ることは必至である。
モノ、サービスの値段は上がり、購買力は低下して、企業業績は落ち、従業員の給与は落ち、失業率は高まるからだ。
海外からの関税収入が増えるから米国内政府の収入は増えて、国家公務員や国の機関を削減し支出は減るから、国家財政は均衡に向かうという。しかし、この政策は長年の米国赤字財政を食い止める代償としては、副作用も甚大すぎる。インフレも不況も、国際的信頼低下など、すべて米国に跳ね返ってくる。米国が進めてきた自由貿易主義をひっくり返し、民主主義の国際協調を放棄するものだ。過去否定してきた、大きな収入の政府と保護主義、国際的孤立主義に逆戻りするためである。
しかもトランプしか決定権が無く、どんな大統領令を出すか、わからないから、政治経済の不確実リスクは跳ね上がる。VIX指数は急伸している。

○日本への影響事例(NHK放送を加工)
自動車への関税のケースでも、景気後退、企業業績低迷がわかる。
@日本への関税
旧2.5→新27.5%
自動車200万円の場合 5万→55万  11倍の関税に。
支払いは納入先(米国内) 輸入業車
米国消費者 205万→255万で買う。(単純な試算で)

日本のGDP(国内総生産)成長率は下がり景気低迷
悪影響率       -0.7%
当初の年度政府見通し 1.2%
修正GDP        0.5% (-58%)

○投資など資産効果を毀損
3営業日で4500円超下落(7日は過去三番目の大幅暴落)
日経株価数は31136円この前まで日経は四万円だったから25パーセントほとの暴落。これは投資家の資産を押し下げるばかりか、企業の株式投資価値を急落させ、政府日銀や年金基金などの資産の暴落に直結する。株式資金を当てにして投資してきた不動産市況への影響もじわじわ出てくるだろう。

○対策は何か?
トランプしか米国政策を判断できず、議会も機能しておらず各国の対抗措置も不明な中では、投資家も静観せざるを得ないのではないか。予見できない大荒れの世界経済の混迷のときは、しばらく嵐が収まるかどうか見極めることが、大切かと思われる。株式が急落したからといって狼狽売りは大損するためしにくい。むしろ高配当の内需、ディフェンシブ株式の買い増しはリスクが低く、比較的安定しているのではないか。 日米政府間交渉をすべきだが、日本側はカードを使い切っているとすれば、カード好きなトランプのDEAL交渉には効果が読みにくい。アジア諸国などとの自由貿易主義をしっかり定着していくことが日本にとって長期的利益につながるかも知れない。
世界経済を破壊するような一方的で理不尽なトランプ関税は、長く続かないだろう。ウォール・ストリートや各国の猛烈な批判を浴び、さらに米国企業や消費者の内からの抗議も半端でないからである。

以 上


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