米国大統領に「内向きトランプ氏」が再選
−日本企業のリスクと機会−



令和6年11月6日
セリングビジョン株式会社
代表取締役 岡部秀也

    来年1月からの米国新大統領に共和党トランプ氏が再選された。昨日の選挙投票で、民主党のバイデン大統領の政策を引き継いだかたちのハリス氏は敗れた。米国の世論を二分して国民各層の分断、政策の分断、価値観の分断を特徴付けた。国際政治経済の影響をもたらす米国大統領選は、同盟国・日本を含め各国の最大の注目選挙だった。

    日本企業への影響も極めて大きい。企業のリスクと機械を検討しBCM(事業継続経営)対策を講じる必要がある。

    トランプ氏の公約、仮説をもとに企業にとってのリスクと機会を見極めることが重要である。

    大統領選での国民向け公約と実際にとる政策は異なるとはいえ、日本企業は少なくとも下記を想定しておくべきでしょうか。

    ◎リスク
    ・環境エネルギー
      パリ協定からの脱退。再エネ、EVシフトから、化石燃料や火力発電、ハイブリッド車の再評価。地球温暖化対策費は削減。
    ・国際ビジネス秩序
      ウクライナ、イスラエルでの戦争の国際的協調・対立の枠組みの変更。ウクライナへの資金支援の縮小が見込まれ、民需と軍需産業の見通し不透明。米国とEUとのギクシャク関係、欧米と対立するロシア、中国等の関係も不透明。日米関係は二国間の損得ディールとなると不安定に。
    ・貿易関税20-50パーセント
      対米輸出企業に課せられ痛手。米国国内企業からの他国輸出も、関税引き上げ合戦で悪影響。特に高関税を公約した「米中貿易戦争」の影響も懸念。
    ・米国民の貧富の格差拡大と社会不安
      インフラ整備、先端技術研究、航空宇宙などへの巨大投資により財政悪化、移民制限と関税で物価高騰。減税で恩恵をこうむる富裕層と、資産を持たず物価高の影響を受ける貧困層の格差広がる。
    ・その他、人種、ジェンダー、宗教等での差別悪化や最高裁、FRBなどトップへの人事権による司法、中央銀行への介入も懸念。

    ◎機会
    ・資源エネルギー
      石油、ガスなどの化石燃料の活用でエネルギーの安定供給、価格の安定化。米国のエネルギー資源企業の雇用維持、業績改善。
    ・法人税の減税
      企業収益が改善し、高配当となり、設備投資や研究開発費の拡大により、株価も値上がり。
    ・規制緩和と小さな政府
      規制緩和により、新たな参入マーケットができ大型のスタートアップやIPOが増える。企業のM&Aは促進される。長い目でみて米国企業の国際競争力の強化につながる。政府の役割の一部を民間が担うため民間活力は発揮しやすい。
    ・上院も共和党が支配し政治的判断は迅速に
      共和党の政策は実施しやすくなり、政策立案、議会通過、実行までの審議時間に手間取らない。
    ・移民政策は厳格になり、国民の失業率や雇用維持にはプラスに。移民による犯罪件数は減り海外からのテロの脅威も薄れる可能性も。

    まとめ
    トランプ新大統領はビジネスを熟知し二国間ディール(取引き)と政治経済的な駆け引きが得意と言われており、新大統領が絡む国際政治的な動向を日本企業もよくウォッチしなければならないでしょう。トランプ政権は、米国第一(MAGA)で一方的(ユニラテラル)な対日姿勢を示すこともありうるため日本政府も企業(日本経団連など)の立場を踏まえ慎重かつ迅速な難題対応が求められることになりそうです。


    以 上


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